自分の未来をビルドしたい

未経験で職務経歴がボロボロの人がSEを目指していきます

好きなものはあとでとっておく主義だ

 苺のショートケーキが好きで、よく行く菓子店で買ってくる。生クリームの豊潤さ、スポンジケーキのもっちりとした食感が五臓六腑に染み渡る。ここまで友人に語ると、大袈裟なと笑われる。そして問われる。

「苺は。苺はどうするんだい。まさか苺は嫌いとは云わないよな」

とんでもない。私は苺のためにこのケーキを買っているといっても過言ではない。好きなものは最後にとっておくのだ。そして、しっかりと味わう。甘さとほのかな酸味が味覚を刺激をし、苺の悪戯っぽい甘い匂いが鼻孔いっぱいに広がる。たまらない瞬間だ。

「なら君の誕生日ケーキは必ず苺のショートケーキにしなくてはね。苺がとびきり美味いのを出してくれるケーキ屋を知っているんだ」

いや、嬉しい言葉だね。でもそんなとびきりな高いケーキじゃなくていい。普通のケーキで満足なんだ。そんなに私の舌は肥えてやいない。そう、普通がベストなのさ。

 

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1.

 

 私は教師をしている。県内では有名な私立校だ。女学校というやつで、中学校から高校までエスカレート式の学校で世界史を教えている。世界史では生徒の理解を深めるだけではなく、この科目にいかに興味をもってもらえるかをモットーに教鞭をとっている。そのおかげか、私の授業では誰一人寝たり私語をしたりケータイを触ったりするような生徒は見受けられない。元がお嬢様学校ということもあり品性が高いというのもあるかもしれないが、生徒たちの授業を聴くときの凛とした態度は教師冥利に尽きるとでもいうだろうか。そんな私にある日、教頭から声がかかった。来年度から担当クラスを持ってみないか、という話だ。正直乗り気ではなかった。担当クラスを持つ、すなわち担任になるということは仕事が大幅に増えることを指す。その分には給与手当が大幅に増えるわけでもない。だがこの教頭の依頼は僕を信頼してのこと。私の私情で無下に断るのも後味が悪い。そして、私は担任となることになった。来年度から高校1年生のクラス、30名ほどの普通のクラスだ。そう思っていたんだ。