自分の未来をビルドしたい

未経験で職務経歴がボロボロの人がSEを目指していきます

生存

 気付くと私の目の中に真っ白な光が飛び込んできた。周りには白い服を来た人たちが騒々しくしている。何を云っているのかがはっきりと聞き取れない。私は少し体を動かそうとしたが、まるで動くことができない。口に何かが覆いかぶさっていることにふと気が付いた。ようやくここで頭が回ってきた。私は病院にいるのだ。そして意識をやっとこさ取り戻したというところだろうか。胸や腕に取り付けられているコードや何やらが私が命の危機に瀕していたことを物語っている。マスクをつけた白い服を着た女性、看護師か。彼女が何かを私に向かって云っていることが分かった。

「聞こえますか!自分のことが分かりますか?」

なるほど、さっきからそう云っていたのか。夢からぼんやり現実に戻って来るように徐々に私の意識ははっきりとしてきた。どこの病院かは分からないが、集中治療室らしき場所に運ばれてきたようだ。相当に危険な状態だったらしい。なぜここに来るようになってしまったのか。そうだ、私は横断歩道を渡っている時に大きなトラックに轢かれてしまったのだ。体が宙に浮いたところまでは記憶があるが、そこからが飛んでしまっている。恐らくひどく頭を打ち付けてしまったせいだろう。そしてどこかの親切な方が救急車を呼んでくれたのか。私は轢かれる前の記憶は嫌にはっきりとしていた。確かに歩行者用の信号機は赤から青に変わっていた。いや、待て本当に青に変わっていたのか。変わっていたならあの人たちの様子は一体なんだというのだ。一連の手紙や出来事に疲れていたからだろうか。何か頭の中に『しこり』が残っているようでなんとも気味が悪くモヤモヤする。そして気のせいだろうか、気のせいであって欲しい。私が信号機を渡る前に向こう側に姿が見えたような気がする。私の部屋にいるはずの縁遠の姿が。その彼女の口元はニンマリと口角が上がっていたようにも見えた。私は体の激しい痛みよりその不可解なしこりに気が向き眠れぬ夜をナースコールが鳴り響く建物で何日か過ごすことになった。