自分の未来をビルドしたい

未経験で職務経歴がボロボロの人がSEを目指していきます

泥濘

なんだこれは、悪戯か。いや悪戯にしてはたちが悪すぎる。嫌な汗が真夏でもないのにしっとりと手を塗らせてくる。これについて生徒たちに言及すべきだろうか。いやなぜだろうか、それはとてもリスクの高い選択だと確信できた。これは普通ではない。異常が私に降りかかってきた。禍いというよりは筆舌しがたい事態だ。現在の私になにが起こっているのかがさっぱり分からない。落ち着こう、呼吸が少し荒くなっている気がする。このことをいまの状態の生徒たちに伝えるべきではないし、ほとぼりが冷めてからもこの手紙については学校関係者には話さない方が良いかもしれない。

「先生、どうかしたんですか。」

虚を突かれて思わず、変な声が出てしまった。飯塚が私の様子を不審に思ったのだろう、教卓を挟んで前にいた。幸いにも手に持っていた禍々しい紙片は彼女には見えていない、そのはずだ。しかし私の反応に怪訝な顔つきをする彼女にどう返したものか。

「いやなんでもない、なんでもないよ飯塚さん。ちょっと私もこの状況は初めてで動揺しているみたいだ。心配してくれてありがとう」

「そう。先生、なんかすごい顔していたから大丈夫かなって。なんか”変なものでもみた”みたいに。そうとても動揺していたわ、あんな先生をみるのは初めてだった」

「そうか、とにかく先生は余っている机といすを持ってくるから、それまで自習ということにしておくからな。飯塚、学級委員としてクラスメイトを頼む」

「わかった、なんかそういう風に頼られるのちょっと不謹慎かもしれないけど嬉しい。

ーみんな!とにかく落ち着こう。一番驚いているのは縁遠さんなんだから。先生が代わりの机といすを持ってくるからそれまで自習だって。とりあえず席に着こう、ね。

これでいいかな。先生」

飯塚が優秀な落ち着きのある生徒でほっとした、さっきまでのクラスのざわつきも委員長の一声で少しはマシになってきたようだ。それでは私はやることをしよう。とりあえず今はあの手紙については忘れよう。そうだ、こんなアクシデントもある。これはたんなるアクシデントだ。しかし私はの頭の中でなにかひっかかるものがあった。これはなんだろうか。まったく気になったことを無視できない性分はこういう時に困る。とにかく行動あるのみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生、見てくれたかな。」

彼女の手は自らの血潮で赤く染まっていた。