自分の未来をビルドしたい

未経験で職務経歴がボロボロの人がSEを目指していきます

流転

 ある日このクラスの異変に私はふとしたことで気づいた。生徒の机と椅子が足りない。昨日まではちゃんと人数分にあったものが突然なくなったのだ。これは悪戯にしては度が過ぎている。場合によってはいじめとも捉えられるものだ。それらの主は縁遠のものだった。彼女はいつも以上にオドオドとし不安そうに眉を下げて右往左往している。こんなトラブルが発生するクラスとは思っていなかったが、まさか先日に辞めた先生の噂は本当のことだったのだろうか。このクラスは「いわくつき」というのは。しかし、このクラス生徒たちの反応を見ると私は疑うことが出来なかった。誰も今のトラブルを嗤ったりして楽しんでいるような様子はなく、被害にあった縁遠のことを慮る態度を見せている。それは嘘偽りない心からの言動に見える。クラスのムードメーカーでリーダー役の飯塚は今にも泣きそうな縁遠の背中をさすり自らのハンカチーフを彼女に貸し涙を拭くように慰めている。正義感の強い彼女らしい行動だ。しかしクラスの皆を疑うようなことは彼女たちは一切云わない。何か不審者は入っての犯行ではないか、他の問題児の悪戯ではないかと議論している。いじめやこのクラスの生徒の悪戯なんかではこの様子を見るとそうでないと結論づけざるを得なかった。だが何か違和感というのだろうか勘とでもいうのだろうか、なんとも云えない靄が私の中で渦巻いていた。何かがおかしい、だが何がおかしい。いややめよう、この前の聞いた話のせいで考えすぎているのだ。あれは偶然で、あの先生の退職理由もご家族の都合と本人も云っていたではないか。そう思い私は深呼吸し教卓に歩いて行き収納スペースにある出席簿を取りだそうとした。するとスルリと1枚の紙片が落ちていった。昨日になにか栞代わりに挟んででおいただろうかと、その紙片を屈んで拾った。そして私は見てしまった、その紙片に書かれたおぞましい文字を何を意味するか分からないが全身が冷水に浸かったような寒気に襲われた、なんなのだこれは、これはどういう意味だ。その紙片には血潮のように真っ赤な文字でこうあった。

 

 

『に げ て』

 

 

私の手にはいつの間にかびっしょり汗が付いていた。