自分の未来をビルドしたい

未経験で職務経歴がボロボロの人がSEを目指していきます

何故に

「なぁ、最近気になってしょうがないことがあるんだ」

昼下がりの教室、クラスの皆はグループを作り姦しく歓談をしている。口火を切った彼は何やらむつかしい本を読んでいた。どうやら臨床心理学に関する本らしいのだが、試しに読んでみたら1頁でリタイアするようなモノだった。

「急になんだ。恋でもしたのか。」

この顔がいいが変人で有名な彼についに好きな人でも、出来たのかと僕は内心ワクワクしていた。ちなみに僕は同じクラスの鏡さんが好きだ。ポニーテールで、なんだそのいわゆる巨乳だ。悪いか、僕も男だ。助平でもなんでも勝手に云え。好きなものは好きで誰にも迷惑はかけたはいない。

「いや、違うんだ。気になっているのは”乳首”のことなんだ」

どうしようか、変人とは思っていたがネジがぽんと飛んでいってしまったらしい。早く保健委員いやこの場合は頭の病院に診療を強く勧めるべきか。そんな僕の困惑をよそに友人は語ることを止めない。

「いやさ、よくお前とか読んでいるマンガでさ、ちょっとエッチなのがあるじゃないか。何故か唐突に女の子が服が破けたりなんか主人公が現実ではあり得んようなアクシデントを起こして、まあ女の子の胸部が露わになるわけだ。しかし、そこにあるのは湯気で隠されていたり、なぜか乳首がある場所になかったりするじゃないか」

「すまない、話しがさっぱり見えてこないんだけれど」

「ああ、結論から言うとだな。乳首って見えると見えないじゃなんでこうも印象は変わるんだろうかということだ。今の少年誌だと隠されている乳首が青年誌だと見えていることあるだろ?正直に言ってくれ、君はどっちがエロティックだと思う?」

「後者だ」

「即答だな。いやでも俺も同感だ。なぜか見えていたほうが何かお得感があるように感じるんだ。あれを不思議に思ったことはないか?」

いやはや、先ほどの言葉を撤回しよう。変人であるが、なかなかどうして鋭いところに目が行く友人だ。しかし、それは様々な意見や派閥のようなものがあり戦争の火種になりかねない話題では、と辺りを僕はきょろきょろと見渡した。女子がこちらで白い目で見ているような感じはするが何かの気のせいだろう、そう思わないと心が死んでしまう。話を僕は続けることを覚悟した。

「恐らくだが、普段は見えないところが見えることに人は興奮し、好奇心を刺激されるんじゃないか。スカートの中身だってそうだ。普段は見えることはないし、無理に見ようとしたら犯罪行為だ。だからこそ、なにかお得感のようなものを感じるのではないか」

僕が熱心にそう語ると友人はううむと唸った。どうやら友人が疑問として凝り固まっていたツボに当たる部分を突けたようだ。友人は、右手を顎にやると何やら考え込みぶつぶつとなにか呟いている。こうなると話しかけても簡単に反応しない。この友人の姿に教室にいた女子は彼に対して各々の感想を発言していた。現代の考える人イケメンバージョンだとか、これ撮っていいかな待ち受けにしたいなどなど。確かに男の僕から見てもこの姿はなかなか様になり格好いいと思った。その代わり僕には先ほどより冷たい目線が注がれている気がする。これは僕の被害妄想や自意識過剰というものであって欲しいと自己暗示をかけていた。そんな中で友人が再び口を開いた。

「いや待て。見えない部分が見えることが見えるに興奮を人は覚えるのは合点がいった。だがなぜ乳首なんだ?乳首の描写に異様にこだわる漫画家やイラストレーターがいるだろう。なぜなんだ。なぜ見えない部分で乳首なのだ。」

「そこは確かに疑問だが、いまある一説を唱えたい。人は生まれたときに母親の乳首を吸って乳を飲む。いいたいことは分かるな?」

「なるほど天才だな。乳首という存在が人にとって生命活動に必要不可欠な存在だからか。なるほど、エロティックに感じているというより母性の何某を彷彿させ安心感を得ていた訳だ!」

良かった、友人の悩みを解決できて。鏡さんが僕を見て胸を隠しながら見たことない表情をしていることを除いては。赤ん坊に返ってしまいたい。